フランス流「装いは知恵」

多民族国家であるフランスは、宗教に基づく文化の違い、DNAの多様性による肌や目や髪の色や性質まで、多種多様な人達が共存している。

それ故、自分を表現するファッションも実に多様化されている。

フランスに生きる女性のファッションは一見、自分の信念や自分の好きなスタイルを貫いているように見えるが、実は賢く生きる為の装いのマナーをとても大切にしている。

服装の選択に気を配る

私が住んでいるのはパリの中心地から電車で20分ほど離れた郊外である。

このエリアでは基本シンプルでカジュアルな服装をした人が多い。

私ももれなく、スニーカーやヒールの無いブーツに、装飾品は小さなピアスのみ。

子どもの通学や公園に行く、その場に合わせたシンプルな服を着る。

そして斜めがけの小さな鞄、つまりスリに狙われない服装を心掛ける。

 

若い女性がむやみに肌を露出して歩かない。

化粧バッチリの女性のミニスカートは売春婦だと誤解される。 

スリや事件などの犯罪に対して、無防備で無意識な装いはしない。

この国の住人は自分が被害者にならない為の賢い装いを幼い頃から自然に習得している。

中学生、高校生の女子は基本的に細身のパンツスタイルにスニーカーが多い。

ミニスカートを履いているティーンエイジャーはフランスに来て9年、2.3回しか見た事がない。

その一方で、地方で家族とバカンスを過ごす時は、夏らしいヒラヒラのワンピースにサンダル。ショートパンツにタンクトップと、思い切り夏を楽しむ服装になる。

そんな夏でも、街中で同じような格好をしている子はあまり見かけない。

それは大人も一緒で、職場や街中、郊外やバカンス時かで服装の違いが顕著に現れる。

ある日、週末の夕方に近所の友人と出くわした事があった。

いつもはパンツスタイルにスニーカーで化粧気の無い友人も、旦那と2人でのディナーの時はワンピースにお洒落な小さな鞄を持ち、赤い口紅と香水で仕上げる。

てっきりカジュアルなスタイルが好きだと思っていたその友人は、このようにTPOに合わせて素敵にお洒落を楽しむ人だったんだとドキドキが止まらなかった事がある。

 

クリスマスパーティーで家族が集まる際も綺麗にドレスアップをしている人が多い。

それを知らずに参加した私は、お洒落にして行ったつもりが、その感覚の違いに恥ずかしい思いをした事がある。

人は見た目で判断される

渡仏して最初の頃、パリのお洒落なファッションエリアへ買い物に行くと、お店に入る時に店員に全身を一通り見られた後、英語で接客を受ける事が多かった。

そこでは少し見下されているような態度を取られる事も多々あった。見た目や立ち振る舞いで人間を区別、差別しているのは容易に理解出来た。

 

数年経ち、フランスをより理解出来るようになった私が気づいた事は、

「自分が着たい服」と「TPOに合わせた、自分らしい服装」は違うという事。

そして、フランスという国は服装のマナーをとても重んじているという事。

 

店に対しての敬意があれば、服装や立ち振る舞いは自然と変わってくる。

靴が汚れていないかチェックする。もしくは最初からそれなりの靴を選択する。

大きな鞄で迷惑をかけそうならば、邪魔にならぬよう持ち方を変える。

汚れて見える服や雨で服が濡れた日は最初からお店に入らない。

自分の立ち振る舞いで、その店の価値が下がるような事はしない。

相手が嫌がる小さな事、心配にさせるような種を事前に摘み取っておく。

 

そういったお店側への敬意を持ち、お店に合わせた服装を心掛けるようになってからは、常に気持ちの良い接客を受けるようになった。

それはレストランやその他の場所でも同じ事だ。

人は見た目で判断される。 

その見た目を作るのはTPOに合わせた装いと、それに伴った立ち振る舞いである。

気持ちの良い対応を受けたければ、気持ちの良い人間になる必要がある。

人間だもの。そういうことだろう。

 

一見堅苦しいし、他人の目やルールを気にして自由なファッションが出来ないんじゃないかと疑問に思う所だが、実はTPOを考えている時点で主導権は自分にある。

自分を表現する事も出来るし、守る事も出来る。

起こり得る全ての現象は自分で変える事が出来るかもしれない。

 

無意識で選んだ服装と、意識して決めた服装はたとえ同じであっても、その楽しみ方や立ち振る舞いは全く別物になっている。

 

こういうファッションの楽しみ方もあるんだなと1つ引き出しが増えた気がする。

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